5分でわかる興信所・探偵業界|業者数動向・探偵業法・届出制・その他

5分でわかる興信所・探偵業界|業者数動向・探偵業法・届出制・その他

5分でわかる探偵業界

興信所・探偵社の業界は一般の人にはほとんど知られていません。

 

一生関わることもない人も大勢います。

 

それだけに、いざ必要になると会社の選び方・依頼の仕方に悩むことになります。

 

このページでは業界の概要をわかりやすくまとめました。

 

業界の知識が少しあるだけで、悪徳業者には格段に引っかかりにくくなります。

 

 

業者の数や規模分布

まず、全国にどんな探偵社がどのくらいあるのか、概観してみましょう。

 

参考サイト: 探偵業界の概況(中小機構)

 

平成28年度経済センサスの試算では、市場規模は860億円とのことです。

 

現在、全国に6,600社以上
探偵業法の定めで、探偵業者は公安委員会への届出が義務付けられています。

 

 

よって合法的な業者の数は届出数によって把握できます。

 

業者数は増加の一途
現在は6,600社以上(警察庁の令和3年末の統計で6,693社)あり、一貫して増え続けています。

 

平成25年(2013)の資料では5,670、令和3年(2021)で6,600ですから8年間で約1,000社の増加。

 

増加のペースも相当なものです。

 

参入障壁低いが、廃業も多い
「免許」や「登録」に比べて簡単な「届出」だけで開業できます。

 

単なる書類提出で、手数料は3,600円、審査もありません。

 

実務経験も法律上は求められません。(実際はそんな簡単な仕事ではないですが)

 

最低カメラや車などがあればできるので、開業費用も少なくて済みます。

 

開業手続きが簡単で、お金も少しでいいので、参入が絶えません。

 

設備投資も在庫も不要なので、少ない元手で始められるわけです。

 

その一方で、毎年かなりの数が廃業しています。

 

個人・零細中心で大手はごく少数
膨大な業者数の内訳は、ほとんどが零細な個人事業で、株式会社などの法人は一握りです。

 

地域的には首都圏が圧倒的に多いです。

 

以前は、法人の中でも全国展開している大手は10社ほどでした。

 

しかし、最近は全国展開する新興探偵社も出てきています。

 

コロナ禍で業界全体が大打撃を受けたのを機に、勢力図が変わりそうな気配が出ています。

 

数百の拠点があると誇示する業者もありますが、それはフランチャイズです。

 

個別事業者が同じ看板を出しているだけなので、区別してください。

 

個人オフィスにも優秀な業者はありますが、怪しいところも少なくないので注意してください。

 

一般的に、零細業者は仕事のキャパに余裕がなく、車両予備・専門機材も貧弱なところが多いです。

 

さらに副業でやっているにすぎない業者、活動実態のないペーパーカンパニーもたくさんあります。

 

さらにひどいのになると、ほとんど経験もないのに探偵の仕事なら何でもやりたいという人もいます。

 

探偵社の利用経験がない人にはなかなか判断がつかないので、まずは大手・中堅を選ぶ方が安全だと考えます。

 

また、テレビ番組の制作協力ができる、テレビ局と取引できる、というのも一定レベル以上の能力があることの証明になると考えられます。

 

業界団体

社団法人などの法人格を持つ団体だけで30以上あります。

 

参考サイト: 日本の調査業協会一覧(Wikipedia)

 

代表的なものは、警察庁が監督する内閣府認可法人・全国調査業協同組合です。

 

監督官庁は、警察庁はごくわずかで、ほとんどの団体は都道府県の所管です。

 

しかし、業種の性格から言って警察直下の団体の方が所属する意味があるのは言うまでもありません。

 

しっかりした団体では加盟の是非は理事会決議で、輩のような会社を排除しています。

 

よってメジャーな団体に加盟していれば、ひどい会社ではないだろうと推定できます。

 

零細業者が権威づけをするために作ったような団体は無数にあります。

 

さもすごい団体のように見せかけますが、実は加盟数が仲間の数社のみで活動実態がないというケースもざらです。

 

注意して裏を取るようにしましょう。

 

探偵業の法律

この業界を律する法律は、「探偵業の業務の適正化に関する法律」(2007年施行)です。

 

「探偵業法」と略称されます。

 

日本の探偵業の歴史は明治時代に始まりますが、探偵を直接対象にした法律はこれが初めてです。

 

 

100年の長きに渡って何の規制もなく、「野放し」状態だったため、悪徳探偵の被害が増えて社会問題化しました。

 

そこで衆議院議員の葉梨康弘氏(元法務大臣)が中心になって、議員立法で作ったのがこの法律です。

 

立法の目的は、消費者(依頼者)の利益と、調査される側の人権の保護です。

 

探偵に捜査権等の特権を与える法律ではないです。

 

そのことは同法の中でわざわざ1条項を割いて述べられています。(第六条)

 

探偵業法 第六条

(探偵業務の実施の原則)
第六条 探偵業者及び探偵業者の業務に従事する者(以下「探偵業者等」という)は探偵業務を行うに当たっては、この法律により他の法令において禁止または制限されている行為を行うことができることとなるものではないことに留意するとともに、人の生活の平穏を害する等個人の権利利益を侵害することがないようにしなければならない。

 

探偵業法の内容

  • 探偵業を営む者は公安委員会に届出が必要
  • 一般人に禁じられていることをやっていい特権があるわけではない
  • 犯罪や差別につながる調査をしてはいけない
  • 個人の利益を害してはいけない
  • 依頼者や調査対象者の秘密を第三者に漏らしてはいけない(秘密保持義務)
  • 暴力団等の反社会勢力は、探偵業を営むことができない

 

といったことが定められています。

 

この法律ができて興信所・探偵業界は安心してつきあえる世界になりました。

 

 

探偵の資格

探偵の国家資格や公的資格はありません。

 

民間資格は数種ありますが、まったく普及していません。

 

探偵学校というものがありますが、卒業している必要はありません。

 

公的資格はありませんが、極めて高い実戦スキルが求められますし、資質がなければ無理です。

 

普通はそれを先輩探偵について、何年もかかって習得します。

 

そういう意味では職人さんに似たところがあるとも言えます。

 

探偵を名乗ることは誰でもできますが、顧客を満足させ、その道で生きていけるのは、ほんの一握りのプロだけなのです。

 


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